組織間リリース
皮膚・脂肪・筋肉などの滑りをスムーズにすることを組織間リリースといいます。
筋肉は膜に包まれており、隣接する筋肉・脂肪・皮膚と滑らかに滑り合うことでスムーズな動きを可能にしています。このときに潤滑液の役割をしているのがヒアルロン酸です。
しかし、使いすぎや長時間の不動姿勢で血行不良が起きるとヒアルロン酸への水分供給が減少し、潤滑液の役割を果たせなくなります。
そこで「IASTM」というステンレス製のツール【smart tools iastm®】を使用し、組織間の滑走性が低下している部分をリリース(解放)します。
組織間リリースの目的
組織間リリースの目的は組織間の滑走性を向上させ、可動域を正常に近づけることです。
の滑りが低下すると、皮膚・筋肉・靭帯・関節包などの柔軟性も低下してしまいます。
筋膜の滑走性を取り戻すには筋膜に水分を取り戻させ、潤滑液(ヒアルロン酸)をサラサラな元の状態に戻す必要があります。
ヒアルロン酸に水分が戻って滑走性が正常化すると、コラーゲン線維の高密度化が解消して筋膜の伸縮性・弾力性を取り戻すことができます。
組織間リリースの効果
振動刺激により血管が拡張し、ヒアルロン酸にも水分が供給されて本来の筋肉同士が滑りやすい状態になり、可動域の拡大・凝りや痛みの軽減・姿勢を整える効果が期待できます。
筋膜リリースの対象
- 肩こり
- 寝違え(炎症期 ✕)
- 四十肩(肩関節周囲炎)
- 腰痛
- 背中の張り
- ギックリ腰(炎症期 ✕)
- 肉離れ・捻挫のリハビリ
”滑走”とは?
筋肉が活動する際にはヒアルロン酸が潤滑液となって皮膚・脂肪・筋肉同士がスムーズに滑り合っています。この状態を”滑走”といいます。
筋肉の滑り
筋膜で包まれた隣り合う筋肉同士は、ヒアルロン酸が潤滑液となり滑り合うことでスムーズに体が動いています。
- 滑走‥正常な状態です。ヒアルロン酸が潤滑液の役割を十分に果たしています。
- 癒着‥筋膜同士の滑りが悪くなった状態です。ヒアルロン酸が凝集化しています。
- 硬化‥筋膜が硬くなった状態です。伸縮性・弾性が減少し、可動域制限・運動痛などの症状が表れます。
滑走性の低下により動きの悪化や痛みが出る理由
使い過ぎ・運動不足・不良姿勢・ケガなどでヒアルロン酸が脱水状態になると、サラサラ→ドロドロ状態となり、乾きかけの接着剤のような働きをしてしまい筋膜同士の滑りが悪くなります。
痛みを感じるセンサー(ポリモーダル受容器)は筋膜に多く分布しているため、滑走不良による摩擦抵抗が痛みとして認識されます。
組織間リリースの方法
「かっさ」を用いて皮膚をこするやり方として、当店では医療用ステンレスツール「IASTM」を使用します。
他にもカッピング(吸玉)も同様の目的で使用することもあります。
アメリカで生まれた専門器具【IASTM】
IASTM (Instrument Assistant Soft Tissue Mobilizationの略)とは、軟部組織リリースのために人間工学に基づきデザインされた、手術用具にも利用されているステンレス鋼製のツールです。(アメリカFDA承認/医療グレード304)
同様の器具として、「グラストンテクニック」「スキンストレッチ」などが知られています。
器具で皮膚をこすって施術
皮膚との摩擦を軽減のため施術部分に摩擦軽減のためクリームを塗布し、IASTMでこするように施術します。
座位・立位・うつぶせ・仰向け・動かしながらなど、最適な体勢でおこないます。
一ヶ所につき数十秒~数分ですが、周囲の関係部位まで範囲を広げていきます。
可動域・運動痛を確認し終了です。
IASTMで皮膚をこすると、筋膜をはじめとする硬くなった軟部組織が破壊されます。
壊された軟部組織は炎症反応のため皮下で点状・斑状に出血し、赤いアザのようになります(通常、アザは数日で消失)。
炎症反応の部分は内出血のため血流が増加し血行が改善、ヒアルロン酸に水分が届けられて滑走性が正常化します。
壊れた軟部組織は、柔らかい正常な組織として再生します(リモデリング)。
組織間リリース施術後
このように皮下に点状・斑状の内出血が発生しますが、早ければ施術時間内、通常は数日以内に消失します。
内出血の理由
筋膜リリースによって損傷した毛細血管の末端から赤血球が漏出したため。
損傷した末梢血管は血管新生により再生される。
禁忌(できない場合)
・癌/腫瘍
・裂傷(キズ)
・骨折
・静脈瘤
・腎機能障害
・血栓症
・妊娠中
・骨粗鬆症
・感染症
・発熱時
・炎症性関節症
※肌が敏感な方はご相談ください
世界中でメジャースポーツチームも使用
リハビリテーションの先進国である米国や欧米では、筋肉や筋膜、靭帯など軟部組織の治療の主流として、IASTMが2000年代半ばから利用されています。海外ではその有効性は広く認められており、カイロプラクター・アスレチックトレーナー・理学療法士・作業療法士によりMLB・NBA・日本のプロ野球・Jリーグなど多くのメジャースポーツで選手のケアに使用されています。